湖(うみ)と西の地勢

土地が持つ物語を読み解き、未来の資産を築く。滋賀の歴史と風土に学ぶ、住まいと土地の視点。

車か、徒歩か:草津の買い物事情が生む「二極化」するライフスタイル

週末の夕方、矢橋町の交差点を埋め尽くすイオンモールからの帰路につく車の列。
カートいっぱいの食料品を積み込み、一週間の買い出しを終えた安堵感を覚える家族がいる一方で、駅前のスーパーで仕事帰りにさっと買い物を済ませる人もいます。

この対照的な光景は、草津という街が内包する双極の商業圏を象徴しているようです。
多核・多層的な大津の商業配置とは異なり、草津の買い物環境は「車中心の郊外型」と「徒歩・自転車中心の駅前型」という、明確な二極構造で成り立っています。

どちらのリズムが、自分たちの暮らしに馴染むのか。
草津の街が持つ商業の構造的特徴から、最適な居住エリアを考察します。

この記事のポイント
  • 草津の買い物は「車中心の郊外型」と「徒歩・自転車中心の駅前型」に大別され、住むエリアで生活様式が大きく変わる。
  • エイスクエアやイオンモール草津の誕生が商業構造を塗り替え、現代の暮らしの中心となっている。
  • 「週末まとめ買い派」か「平日分散買い派」か、自身の生活習慣を明確にすることがエリア決定の指針になる。

アル・プラザ草津の外観

出典: Al plaza Kusatsu 202211-1 by 運動会プロテインパワー, licensed under CC BY-SA 4.0.

拡散する中心と商業の変遷

草津の買い物環境が持つ二面性は、歴史的な必然性を持っています。
彦根のように新たな中心が旧来の中心を塗り替えていった事例とは異なり、草津では時代の要請と共に商業の中心が次々と「拡散」していった経緯そのものが、現在の二極構造を作り出しました。

宿場町から始まった駅前商業

かつて草津の商業の中心は、旧草津宿本陣に近い駅東口でした。
平和堂も1968年に草津店(現・くさつ平和堂)を出店し、長らくこのエリアが街の賑わいの核であったことは疑いようがありません。

その流れを変える転換点となったのが、1996年の「エイスクエア」の開業です。
広大な駐車場を備えたこの複合商業施設は、それまでの徒歩中心の駅前商店街から、車で訪れる郊外型消費へのシフトを象徴する出来事でした。
この西口への展開が、草津の商業構造を塗り替える最初の大きな波となったのです。

湖岸の広域拠点

そして2008年、湖岸エリアに「イオンモール草津」が誕生します。
これは草津市内だけでなく、大津や栗東、守山からも買い物客を集める広域的な拠点となりました。

湖岸が選ばれた背景には、90年代以降のモータリゼーションのさらなる進展と、大規模小売店舗立地法による規制緩和があります。
より広大な土地と駐車場を確保できる郊外、特に京滋バイパスからのアクセスも良い湖岸エリアは、こうした超広域型商業施設にとって理想的な立地だったのでしょう。

この結果、草津の商業構造は「駅前」と「郊外モール」という、二つの強力な核が併存する現在の姿へと至りました。

ライフスタイルとエリアの相関

それでは、ご自身の生活習慣はどちらに近いか考えながら、エリアごとの具体的な買い物環境を整理します。

湖岸エリアの週末完結型

車で週末に一週間分の食料品や日用品をまとめて購入したいファミリー層にとって、重要なのは大規模な駐車場を備えた商業施設の存在です。

湖岸エリア(矢橋町、新浜町など)

このエリア最大の利点は、「イオンモール草津」の存在でしょう。
食料品スーパー「イオンスタイル」はもちろん、ファッション、雑貨、家電、レストラン、映画館まで、あらゆるものが一箇所で揃います。
週末に家族で出かけ、買い物をレジャーとして楽しむ生活に適しています。

また、周辺には業務用の大容量商品が魅力の「ラ・ムー 草津店」もあり、車を使えば多様なニーズに応えてくれます。
平日に「牛乳一本だけ欲しい」といった場合には、少し不便を感じるかもしれません。

湖岸エリアの核となるイオンモール草津。周辺に大規模店舗が点在する、完全な車社会エリアです。

駅周辺の平日分散型

共働きなどで平日の帰宅が遅く、仕事帰りに必要なものだけを効率的に買いたい方には、駅周辺の商業施設が心強い味方になります。

草津駅周辺(大路、西渋川など)

草津駅の強みは、商業施設の集積度の高さです。
駅直結の「エルティ932」内には食料品スーパー「阪急オアシス」があり、少し質の良い食材を求める際に重宝します。
東口には百貨店の「近鉄百貨店 草津店」、西口には複合商業施設の「エイスクエア」があり、ここには大型スーパー「平和堂 アル・プラザ草津」のほか、無印良品やユニクロまで揃っています。
仕事帰りにほとんどの用事を済ませられる、非常に利便性の高いエリアです。

草津駅。西口のエイスクエア、東口の近鉄百貨店やエルティ932など、商業施設が駅を囲むように集積しています。

南草津駅周辺(野路、野路東など)

南草津駅前は、日常使いに便利なスーパーが充実しています。
西口の複合施設「フェリエ南草津」内には24時間営業の「SEIYU(西友) 南草津店」があり、帰りが遅くなっても安心。
東口には「フレンドマート 南草津店」があり、こちらも多くの住民に利用されています。
また、少し歩けば「マツヤスーパー 矢倉店」などもあり、価格や品揃えに応じて使い分けることが可能です。

南草津駅。西口のフェリエ(西友)、東口のフレンドマートなど、徒歩圏内に日常使いのスーパーが揃います。

時間効率と街の温度

草津の買い物環境は、エリアによって大きくその性格を変えます。
最終的なエリア選びは、それぞれの家族が「買い物」という行為に、時間と心のエネルギーをどう配分したいかという、暮らし方の決断そのものです。

歴史を紐解けば、草津は東海道と中山道が分岐・合流する、当時の交通体系における要衝でした。
江戸時代の昔から、この地は通過点にとどまらず、多くの往来者が足を止め、物資を整える消費の拠点として機能していた記録が残っています。
現代において、その舞台が宿場町の茶屋から巨大なショッピングモールへと姿を変えただけで、人が集まり物が動くというこの街の機能は、数百年という時を超えて受け継がれているのかもしれません。

週末に時間を確保し、車で効率的に一週間の買い物を済ませることに重きを置くのであれば、イオンモールなどへのアクセスが良い湖岸エリアは、非常に満足度の高い場所となるでしょう。
一方で、多少地価が高くても、駅周辺の徒歩圏エリアを選べば、日々の身軽さと時間の節約という恩恵を受け取ることができます。

週末、広い店内を巡る高揚感か。
仕事帰り、駅前のスーパーで夕飯の献立を考える安らぎか。
どちらの風景に、自分たちの家族の笑顔がより自然に浮かぶのか、改めて想像してみる必要があります。

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※店舗情報に関する注記:この記事で紹介している店舗名や業態は、2025年10月時点の情報を基にしています。店舗の統廃合やリニューアルなどにより、状況は変動する可能性があります。
土地のご契約や生活設計に際しては、必ずご自身の目で現地の買い物環境をご確認の上、最終的な判断をお願いいたします。

(参照:各商業施設公式サイト、草津市公式草津市都市計画マスタープランJR西日本乗降人員データ 等)